あれは高校二年生の体育祭の日。運動があまり好きではなかった友達と二人で人気の少ない校内を歩いていた時のこと。
2~3メートル前方の左側に階段、右側に医務室か何か電気は付いておらずガラス窓に内側からカーテンが閉められた部屋がある廊下を歩いていた時、私は階段の下から真っ黒な人間が上っていくのが見えた。それと同時に隣を歩いていた友達が「うゎ!」と声を上げたので「今の見た?」と興奮気味に聞くと「右手のガラス窓に同じ高校の夏服を着た男子生徒が階段を上っていくのが映った」と言ったのです。友達の視界にもこの空間に二人以外の人間が居ないのは明らかだったので、思わず声が出たようでした。
同じ空間でしたが別の形でそれぞれに見えたものが何だったのか・・・
後日、運動部に所属する友達に話したところ、先輩から聞いた話を教えてくれました。
6年前に体育祭を楽しみにして練習をしていたクラスの人気者だった男子生徒がその年の体育祭の直前に交通事故で亡くなっていたという事実があったと。
友達と二人、実際に体験した時よりその話を聞いた時の方が震えが止まらなかったことを思い出します。