動物は「物」ではなく「命」

ゴールデンレトリバーの子犬の横顔 社会の課題

コロナ禍で起きたペットブームと飼育放棄

悲しい目をした犬がこちらを見ている白黒写真

自粛生活が続く中でペットを飼いたいと思うことは自由だし、当初は動物があまり好きではなかった人が何かのキッカケで飼うことになり愛情を感じて家族同然に大切に飼育している例は沢山あると思います。

ちゃんと飼育出来る環境と時間と経済力があるのなら、既に生まれてきている命を1匹でも多く受け入れてあげてもらいたいと思っている部分も勿論あります。

しかし、動物も人間と同じように個体差があるのは当たり前のことで、それぞれに性格も違えば先天的な病気ではなくても体質的になりやすい病気や飼育状況による後天的な変化が起こる場合もあります。

人間同士だって以前は仲良くやっていた友人となんとなく合わなくなることもあれば、些細な言動で疎遠になってしまった経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。それでも人間はなんとか食べて生きていくことは出来るけれど、動物(特にペット)は違います。

近頃は昔に比べるとだいぶ少なくなった野良犬や野良猫ですが、それでもまだ外の過酷な環境で生活しなければならない野良たちは存在しています。

日本に野生の犬は存在しておらず野良犬や野犬などと呼ばれる犬たちは元々はペットだった犬(イエイヌ)たちで、猫も同様(注:日本産の猫科動物はツシマヤマネコとイリオモテヤマネコの2種だけ)で野良猫(野猫)と呼ばれている猫も元々はペットだった猫(イエネコ)たちなのです。

誰かが捨てたり逃がしたりして繁殖し、日々の飢えや外敵となる動物・車や感染症のみならず悪意のある人間に生命を脅かされる過酷な環境で暮らしている小さな命たちをこれ以上増やしてはならないと強く願っています。

[参照]コロナ禍、癒やし求めてペット…数日で飼育放棄する実態 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

保護犬たちとの出会い

地方ではまだ捨て犬や捨て猫が多かった私が小学生の頃、学校帰りに何度か捨て犬を拾っては飼いたいと親に何度もお願いしたことがありました。しかし、その時は兄妹ともに子供だったためお世話も出来ないだろうと飼ってはもらえず、近所の人や友達の家族経由で飼ってくれる人を探しては引き渡すということをしていた時期がありました。今でいう里親探しを小学生がやっていたということになるんでしょうか。あまりに何度も繰り返し拾ってくる私に根負けした親から私が中学生になったら犬を飼ってもいいとお許しをもらい、ついに私が中学2年生になった時に友人の家で生まれた子犬を迎えることが出来たのです。

その頃の田舎は外飼いの犬がほとんどで初めてのワンコも生後半年を過ぎた頃から庭の犬小屋で飼うようになり、家族全員でお世話をして最終的には18才で虹の橋を渡るまで家族に幸せを沢山くれました。

その後、私が進学のために実家を出てからも数頭の犬を飼い、現在は私が里親募集サイトで見つけた保護主さんが保健所から引き取ったという白い雑種の中型犬を迎えて、そろそろ8年程が経つ頃です。それまでに犬を飼った経験から大の犬好きになっていた両親のために私が探したのですが、この子は山をさまよっていた野犬の子供だったようで警戒心がとても強く極度のビビりで引き取ってから半年位はお散歩に連れ出しても歩けなかったため抱っこしてお散歩をしていました。また人間の動きや小さな物音にも非常に敏感で、何度もビクッとしては尻尾を下げ姿勢を低くしている姿を見ては家族全員が心を痛める日々が続きました。ウチに来たときは生後およそ2ヶ月半だったとのことなので、生まれてからすぐに沢山怖い思いをして来たんだと思うと涙が止まりませんでした。

特に一緒に過ごす時間が多かった父親は犬が好きなだけ余計に可哀そうで見ていられないから飼えないかもしれないと私に言ってきたことがあり、保護主さんに相談したりドッグトレーナーにお願いしながら根気強く接して1年後には本当に少しずつでしたが何とか心の傷を癒していくことが出来てやっと家族になれたと感じることが出来ました。

保護されるまでの環境の違いや各々の個性はあると思いますが、保護犬や保護猫を飼うのは苦労も多いと思います。でもその大きな原因は、もとは無責任な人間たちにあるということを絶対に忘れないでください。

保護猫に興味を持つきっかけ

子供の頃から完全な犬派だった私が猫も同じように好きになったのはYouTubeの保護猫動画がきっかけでした。

野良猫や捨て猫を保護する動画がこんなに沢山あるとは知らず、本当に驚きました。大ケガをしたりガリガリにやせ細って保護された猫ちゃんがその後どうなっているのか気になって探したり、休日はおすすめに表示される動画を一日中見続けたりすることもありました。

現在の状況でペットを飼育することが出来ないため、個人の方から動物愛護団体まで様々な状況で保護活動をされている方々には心からの感謝と敬意を表します。

本当に沢山の保護猫たちの動画の中でも特に私に衝撃を与えた二本の動画があります。

過酷な環境の中でも小さな身体で必死に生き抜いてきた両極端な個性を持つ二つの尊い命と保護してくださった方々に尊敬の念を禁じ得ません。

YouTubeの動画を貼っておきますので、まだ観たことのない方は是非一度ご覧になってみてください。

注)大怪我や病気の映像が映っていますので、苦手な方はとばしてください。

現在は二匹とも治療を受けて愛情深い保護主さんの手厚い保護のもとで安全に暮らしている元保護猫たちです。

二本脚の猫エースくん(チャンネル名:musubiyori)

エースの命の期限は、1年前の今日でした【猫のモーニングルーティン】

元山の野良猫シロさん(チャンネル名:コノポックル)

【43】保護後の両耳と避妊の手術で過酷な事実が明らかに

動物愛護管理法の概要

[環境省HPより抜粋]

(1)基本原則

すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めています。

(2)動物愛護週間

広く国民の間に動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を深めるため、毎年9月20日から26日までを動物愛護週間とし、国及び地方公共団体ではその趣旨にふさわしい行事を実施しています。

(3)動物の飼い主等の責任

動物の飼い主は、動物の種類や習性等に応じて、動物の健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命等に害を加えたり、迷惑を及ぼすことのないように努めなければなりません。また、みだりに繁殖することを防止するために不妊去勢手術等を行うこと、動物による感染症について正しい知識を持ち感染症の予防のために必要な注意を払うこと、動物が自分の所有であることを明らかにするための措置を講ずること等に努めなければなりません。なお、動物の所有情報を明らかにするためにマイクロチップなどによる所有明示を推進しています。なお、令和元年6月に改正された動物愛護管理法において、販売される犬及び猫に対し、マイクロチップの装着、所有者情報の登録等が義務化されました。この規定の施行は令和4年6月までとされています。

(4)動物の飼養及び保管等に関するガイドライン

家庭動物、展示動物、畜産動物、実験動物のそれぞれについて、動物の健康と安全を確保するとともに動物による人への危害や迷惑を防止するための飼養及び保管等に関する基準を定めています。また、動物を科学的利用に供する場合は、いわゆる「3Rの原則(苦痛の軽減等)」等に配慮するように努めなければなりません。また、実験動物を利用する際には苦痛の軽減、動物に代わり得るものの利用、数の少数化などの基準を定めています。

(5)動物取扱業者の規制

第一種動物取扱業者(動物の販売、保管、貸出、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養を営利目的で業として行う者)は、動物の適正な取扱いを確保するための基準等を満たしたうえで、都道府県知事又は政令指定都市の長の登録を受けなければなりません。登録を受けた動物取扱業者には、動物取扱責任者の選任及び都道府県知事等が行う研修会の受講が義務づけられています。また、都道府県知事又は政令指定都市の長は、施設や動物の取り扱いについて問題がある場合、改善するよう勧告や命令を行うことができ、必要がある場合には立入検査をすることができます。悪質な業者は、登録を拒否されたり、登録の取消や業務の停止命令を受けることがあります。

また、飼養施設を設置して営利を目的とせず一定数以上の動物の取扱いを行う場合については、第二種動物取扱業者(動物の譲渡し、保管、貸出、訓練、展示を非営利で業として行う者)として、都道府県知事や政令指定都市の長に届け出なければなりません。

(6)周辺の生活環境の保全

多数に限らず1頭の動物を飼うことによっても、不適正な飼養により、周辺の生活環境が損なわれている事態が生じていると認められる場合、都道府県知事又は政令指定都市の長は、その事態を生じさせている者(飼い主等)に対して必要な措置をとるように指導、助言、勧告や命令等を行うことができます。

(7)危険な動物の飼養規制

国が定めた危険な動物とその交雑種は令和2年6月1日から愛玩の目的での飼養ができなくなりましたが、動物園や試験研究等で飼う場合は、法律に基づき都道府県知事又は政令指定都市の長の許可を受ける必要があり、動物が脱出できない構造の飼養施設を設けるなどして、事故防止を図らなければなりません。また、飼うにあたってはマイクロチップなどによる個体識別措置が義務づけられています。

(8)犬及び猫の引取り等

都道府県、政令指定都市又は中核市は、犬及び猫の引取りを行うとともに、道路、公園、広場、その他の公共の場所において発見された負傷動物等の収容を行います。

(9)基本指針と推進計画

動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するため、環境大臣が基本指針を、都道府県は推進計画を定めます。

(10)動物愛護推進員と協議会

都道府県知事等は動物の愛護と適正な飼養を推進するため、動物愛護推進員を委嘱するとともに、動物愛護推進員の活動を支援するため協議会を組織することができます。

(11)罰則

愛護動物 をみだりに殺し又は傷つけた場合は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処されます。また、愛護動物に対し、みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であって疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であって自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行った者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処され、遺棄した者も、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。

*愛護動物とは

1 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
2 その他、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

黒い犬と茶色の猫が寄り添っている

動物愛護法が改正されても…

動物愛護法では、動物は「命あるものである」と記されています。自分の所有する「モノ」をわざと壊しても「もったいない!」と怒られるくらいで済みますが、ペットである犬や猫を理由もなく殺傷すれば、「愛護動物殺傷罪」として刑事責任を問われることになります。

それでもまだ「動物は(ペットは)法律上『モノ』だから…」とよく言われることがあります。なぜそう言われるのでしょうか?

猫を数匹飼っていた一人暮らしの飼い主さんが突然他界された現場に向かった保護猫団体の動画の中で、私はその理由を理解することが出来ました。

鍵の掛かった一軒家に向かい室内に残されている猫たちを保護しようとしましたが、親族に連絡が取れなければ中に入ることは出来ないと警察の方に断られてしまい、引き返すしかなかったのです。事件性はないけれど住人がお亡くなりになっているということなので警察は現場検証のため、家の中に事前に入っているにも関わらずです。

もし室内に人間の子供が残されていたら保護しますよね? 取り残されてから時間が経っていれば尚更、命にかかわる一刻を争う事態です。そんな時に親族の許可なんて必要ですか?

いくら動物愛護法が改正されても未だペットは物としての扱いなんだという現実に憤りを通り越してやるせない気持ちになりました。専門家ではないので詳しいことは分かりませんが、もう少し動物の命に寄り添った法改正が一日も早く実現されることを願ってやみません。

この一件につきましては、その後の保護団体の代表者の粘り強い交渉の結果、警察の方から親族に許可をとってもらい残された猫たちを無事に保護することが出来たことを付け加えておきます。

人間も動物もみんなスピリチュアルな存在

大型犬と女性が土手に後ろ向きで隣り合わせに座っている

スピリチュアルと聞くと心霊やオカルト的な受け取り方をされる人もいらっしゃると思いますが、「spiritual」(スピリチュアル)の語源は「spirit」(スピリット)です。日本語で分かりやすくいうと「精神」「魂」そして「心」「感情」など目には見えなくても確実に存在するものなのです。

人間と同じように動物にも魂があります。保護犬や捨て猫が人間や物音を異常に怖がったり人に攻撃的になることがありますが、それまでの経験で人間は自分たちに危害を加える怖い存在だと認識する出来事があったからにほかなりません。

動物という大きな括りでは人間に危害を与える可能性の高い猛獣や感染症を媒介する生き物も存在しているのですが、ここでは長い歴史の中で人間にとって身近な存在であるイエイヌ・イエネコに焦点を当ててお話しています。

彼らは多くの場合、元は人間と一緒に生活していた存在だから人間に頼らなければ安全に生きていくことが困難な生き物たちです。心身を傷つけられれば痛みを感じ、防衛本能から攻撃的な態度になってしまうこともある私たち人間と何ら変わりないスピリチュアルな存在だという認識が当たり前の社会になるために、自分たちが出来ることをどんな些細なことでも思い立った時だけでもいいので少しずつやっていきましょう。

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